冷え性は西洋医学では、自律神経失調症という捉え方をしています。
したがって、東洋医学で取り上げられる冷え性という言葉は西洋医学にはありません。
この違いは、同じ症状や病状でも考え方が異なる場合があるという一つの例です。
したがって、冷え性は西洋医学では自律神経失調症の症状分類に入れられます。
つまり自立神経が失調した時に現われる症状という訳です。

自律神経失調症とは、体内で重要な役割を持つ自律神経のバランスが崩れたために起きる様々な症状を指します。
そして、自律神経系の病気は特にどこかの内臓器官が悪くなっていないのに様々な症状が出るのが特徴で、手足の表面が冷える冷え性の症状もこの特徴の中に含まれます。
手足が実際に冷える症状が出ていても、手足に何らかの疾患があるわけではなく、あくまで手足の冷えは、自律神経の働きが狂っているために起きているとされているのです。
様々な原因が考えられますが、自律神経のバランスが崩れると、交感神経と副交感神経が適切に働かなくなります。
この自律神経のバランスが崩れると、手先や足先に熱を伝える末梢神経までちゃんと働かなくなってしまうのです。
その結果、血流が悪くなり体熱が先端まで伝えられなくなり、それが手足の表面に、「冷え」の症状で現われ、感じられるのです。
この自律神経のバランスを崩す原因と考えられているのは、ホルモンバランスの崩れやストレスです。
ストレスは近年では年齢や性別を問わず多くの人が感じていますが、思春期や更年期の年代の女性ホルモンバランスが崩れやすいようで、これらの年代の女性はホルモンの変動が大きいのが自律神経のバランスが崩れる原因です。
したがって、ホルモンバランスが崩れやすいということは、それだけ冷え性に陥りやすいということですから、これらの年代の女性は特に冷え性に気をつけるべきでしょう。
しかし自律神経失調症の症状は、冷え性にだけに限らず別の症状としても現われますから、冷え性以外の症状についても、思春期にある人や更年期にある人は注意が必要です。
東洋医学からみる冷え性の考え方
冷え性は西洋医学では病気とは認められませんが、東洋医学では「冷えは万病のもと」と言われて、冷え性に対する改善方法などが重要視されています。
東洋医学では、体が冷えて血の巡りが悪くなると冷え性で、体中の水分の代謝機能の低下が「むくみ」であり、ストレスの溜まり過ぎが気力の低下につながると考えられています。
そして、これらを「血」「水」「気」の3つに分けて、これらのバランスを整えることで体が健康になるとも考えられています。
体が冷えて血の巡りが悪いということは、血の巡りが悪くなったために体が冷えるとも考えられますが、それは体の水分の代謝も悪いということで、気持ちに活気がなくなり、心まで冷えてしまうことになります。
たかが冷え、と軽く考えずに、体中に冷えが溜まり過ぎる前に冷えは解消すべき現象なのです。
東洋医学での冷え性改善策の一つとして漢方薬がありますが、漢方薬は冷え性を改善するだけでなく、むくみや気力など体のバランスの乱れを全体的に整える作用がありますから、体質改善にも役立つとされています。
ただし、ご存知のように東洋の漢方薬は西洋医学の薬のように服用してすぐに効き目が出るものではありませんから、漢方薬が効いてくるのには最低でも半月程はかかります。
また、漢方薬も様々ですから、自分の体に合ったものを選ぶことが大切になるので、医師や薬剤師に詳しく相談しながら服用することが必要です。
さらに、冷え性の改善に関して東洋医学では漢方薬に頼るだけではなく、食事や心の状態、生活習慣など生活全般から体のバランスを考えられていて、特に食養生は大切だとされています。
食養生とは
「食養生」とは何をどのように食するのが健康維持のために良いのかという、多くの先人たちから踏襲されている英知のことです。
現存する日本最古の医学書は平安時代の宮中医官である丹波康頼撰の『医心方』です。
ここには隋・唐の医説、医術が収録され、食事による健康法も記されています。
近代では「食養」という言葉を提唱した明治時代の軍医である石塚左玄が、風土性と自然食を強調する食物養生法を縮めて「食養」と名づけ、食と養生の大切さを説きました。
このような食と養生の考え方は日本の医療の中核を担っていましたが、明治以降日本の西洋化によって一度は衰退してしまいます。
しかし、最近になって代替医療やマクロビオティックなどへの注目から食 と養生も見直され、再び大きく取り上げられるようになりました。
昭和になって、食養生の基軸をなす「食養生の順番」の基礎を構築した 菅野賢一医学博士の視点が加わることで体系化がなされます。
出典:食養生コーディネーター講座|日本食事療法士協会
したがって、冷え性の改善には食べ物や飲み物も大いに関係しますから、体を温めるための食べ物や血流を良くするための食べ物などに関する研究や、昔からの先人たちの知恵や経験も重く受け止めることが大切です。
冷え性の改善は単に手足が冷たくならないというだけではなく、身も心も健康体になることだと理解しましょう。
冷え性を改善する漢方薬の種類と鍼灸治療
冷え性に効く漢方薬と言われても、日頃漢方薬に縁がない人には皆目検討がつきません。
そこで、ここではどのような漢方薬があり、冷え性に効果があるのかを見ることにします。
ただし、漢方薬は実に種類が多いので、ここではその代表的なものに絞ることにします。
腰から下が冷えることが多く、頭や手の冷えなどもきつくて、疲れやすくすぐに横になりたくなる。
夜間の排尿回数が多い。
代表漢方薬は「八味地黄丸」です。
活力を増強し、血行を促進して体を温めます。
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腹や手足が冷えて、元気がなく疲れやすいとか食欲不振で味が鈍い。
消化が悪く腹にもたれるとか腹が痛むし、吐き気や下痢をしやすい。
つばやよだれが多い。
代表漢方薬は「人参湯」です。
消化吸収を強めて体を温めます。
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強い冷えや元気がなく疲れやすい。
気力がなく体が重くて下肢にむくみがあり、排尿が困難。
代表漢方薬は「牛車腎気丸」です。
体を温めて活力を増強し、水分を体外へ排泄します。
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下半身に軽度のむくみがあり、冷えて体がだるくて動かしにくい。
腰痛。
代表漢方薬は「桂枝加苓朮附湯」です。
体を温めて水分を除きます。
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手足の指先と下半身の内側や陰部、下腹部が冷えて顔色が冴えなく爪がもろい。
筋肉がひきつり、腹痛。
代表漢方薬は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」です。
体を温めて血行を良くするとともに栄養状態を良くします。
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以上は冷え性に効果があるとされている漢方薬のごく一部ですが、漢方薬の専門店には実に経験が豊富な専門家がいますから、自分の冷え性について詳しく説明をすることで、これら以外の漢方薬を処方してもらえると思います。
避けたいのは誰にも相談しないで、独断で漢方薬を選ぶことです。
漢方薬には通常それほど強い副作用はないと考えられていますが、服用してすぐに効果が現われるというものではありませんから、ある程度の期間中服用することになります。
そのような場合、体質に合わない漢方薬では何もなりませんし、かえって悪い場合もあるでしょう。
必ず専門家に相談の上での漢方薬の使用をお勧めします。
漢方薬よりも簡単に摂取できるものとして、「ひえとりん」という温活サプリを飲むという方法もあります。
このひえとりんには和漢植物が配合されているので、カラダの内側から温めてくれる効果があります。
鍼灸院で冷え性を改善する
冷え性と鍼・灸について考えてみましょう。
何故ならば、この間には無視できない関係があるからです。
最近、不妊症の治療に整骨院や鍼灸院へ通う女性が増えているそうです。
不妊に鍼・灸は無関係のように思えるかもしれませんが、これは冷えが不妊につながることも十分あり得るという事実が判明したからのようです。
これで冷え性と鍼・灸の関連がお分かりいただけたかと思います。
つまり、冷え性が進むと子宮という生殖器官に悪影響を及ぼし、結果として不妊症になる恐れがあるのです。
不妊症とは
「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。
日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。
出典:不妊症:病気を知ろう:日本産科婦人科学会
最近は女性だけではなく、男性でもこのような不妊治療効果を期待して鍼治療を受ける人がいるようです。
男性の不妊を取り扱う鍼灸院も増えてきているようですが、問題は保険がこのような鍼・灸には適用されないため費用が馬鹿にならないことです。
もし、保険を適用したい場合は整骨院などに通うという方法もあります。
鍼は末端冷え性の女性が通うと思いがちですが、男性の場合はさらに重症になり易い内蔵型タイプの冷え性になっている人も少なくありません。
男性の鍼灸師がいるところもありますから、腹部の冷えが激しいという男性は鍼・灸を試すのもいいのではないでしょうか。
鍼を体に刺すことでで、つぼ(体の血流点)を刺激してスポーツなどで疲弊した筋肉のバランスを整えますし、場合によっては刺した鍼に低周波の電流を流してマッサージ同様の効果が得られます。
このような効果は冷え性などが原因で凝り固まった筋肉をほぐしますから、結果として凝りや冷え性を解消する効果につながるのです。
鍼を打つと出血するのではないかと心配される人もいるでしょうが、鍼を打った時に開く穴は極めて小さいもので、血液が漏れ出る隙間がないほどなのだそうですから心配は無用でしょう。
冷え性対策で様々なことを試してみたが、さしたる成果が得られない人や、もしかしたら重度の冷え性で内臓などに悪影響があるのではないかと疑いがある人は、東洋医学の代表である鍼・灸を試されるのもいいのではないでしょうか。